複数取締役がいる場合の業務執行
株式会社においては、出資者である株主は会社の業務執行をせず、株主総会において選任された取締役が会社の業務執行を行います(会社348①、362②)。
取締役会を設置していない会社において取締役が複数いる場合、会社の業務執行は支配人の選任や支店の設置等一部の事項を除いて、取締役の過半数の賛成をもって決定するものとされています(会社348)。
ただし、定款で定めることによって、原則は特定の取締役に業務執行の決定を委任する事ができるほか、会社の業務執行は取締役全員の一致で決定するものと定めることも可能であるなど、会社の実情に応じて柔軟な対応が可能です。
業務執行の決定方法については、会社法には規定がありませんので、決定事項を記載した書面を回覧して賛否を問うなど適宜の方法で行っても構わないのですが、取締役が一堂に会し、会議体で業務執行の決定を行うと定款に定めることも可能です。
なお、「取締役3名のうち1名の賛成で業務執行を決定する」というような定款の定めは、同一事項で異なる結論となる可能性もあるので合理性を欠き無効と解されています。
取締役会を設置していない会社においては、取締役の決定につき議事録を作成し、これを会社の本店に備え置く義務はありません(会社369④、371①)。
しかし、商業登記法46条1項で、登記すべき事項につき取締役の一致を要するときは、一致があった事を証する書面を添付して、登記申請をする事が要求されていますので、この場合には取締役の決定事項につき書面を作成する必要があります。
書面の作成方式は特に法定されていませんが、業務執行の決定が成立するのに必要な数(定款で特に定めていなければ、取締役の過半数)の取締役が署名または記名押印している必要があります。
司法書士 堀 明子